カテゴリー別アーカイブ: トピックス

大王わさび農場に黒澤ワールド「夢ゾーン」

安曇野市の代表的な観光名所の一つ、信州安曇野大王わさび農場(同市穂高)は来春、故黒澤明監督の映画「夢」の撮影地になったことにちなみ、場内に「夢ゾーン」を設ける。それに先駆け、映画のセットとして使われ、農場のシンボルになっている水車小屋の水車を新調。「夢の橋」と名付ける予定の大橋の改修も行った。「黒澤ワールドを実現させたい」と期待している。

水車小屋は蓼川沿いに3棟連なっており、新調したのは、3基の水車の中で最も大きい直径3.6メートルの1基。作られてから20年がたち、老朽化が目立っていた。
明科の業者が製作した新しい水車は米国産のヒバ材を使用。経年変色した他の2基とは違って新しい木材の白さが際だっている。
一方、大橋の改修は30年ぶり。鉄骨の橋脚はそのままに、橋板や手すりなどを交換した。全長は48.6メートルあり、同農場総務部広報室の濵重俊室長は「全国のワサビ畑にある橋の中で最も長いのでは」という。

水車が老朽化したため、観光客がピークとなる7、8月は回すことができず、9、10月は新調するため取り外した。この間の来場者の反応につい濵室長は「本当にがっかりした様子だった」とし、「あらためて黒澤監督の残した物の偉大さを感じた。水車は農場だけでなく安曇野のシンボル」と実感。「夢ゾーン」を設けることを決めた。
水車小屋、大橋、実際に映画の撮影が行われたワサビ畑の道に、水車小屋から大橋を渡ってすぐの場所にある親水広場を加え、一帯を「夢ゾーン」とする計画だ。
今後、大橋にネームプレートを付けたり、親水広場を拡張したりする。親水広場にある池でかつて飼育し、観光客に人気だった黄だいだい色の突然変異のニジマスも復活させるという。
来年3月の「わさび花祭り」までに全体を完成させ、PRを始める予定で、濵室長は「これまでは、水車だけが注目されがちだったが、ロケに関わった場所として全体をクローズアップしたい。黒澤監督が残してくれた物を守るのも役目」と話した。
(浜秋彦)

【夢】
1990年に公開された黒澤明監督による日本とアメリカの合作映画。「日照り雨」「桃畑」など、黒澤監督自身が見た夢を元にした8話からなるオムニバス形式。大王わさび農場は、第8話の「水車のある村」のロケ地になり、水車小屋などのセットを製作し、1989年に撮影が行われた。

松本などの母親グループが「こども食堂」を立ち上げ

松本市などの子育て中の母親たち6人でつくる「アップルツリー」は、核家族で孤立しがちな母親と子どもに地域の中での居場所を作りたいと、「こども食堂」を立ち上げた。今後、赤ちゃんからお年寄りまで、食事をともにしながら世代交流ができる場にしていきたい考え。各地区に輪を広げ、地域に根ざした“憩いの場”を目指している。
13日は波田公民館で開き、小さい子どもを連れた母親ら約40人が訪れた。口コミやSNS(会員制交流サイト)で仲間が広がった。この日のメニューは野菜たっぷりカレーとマカロニスープ、ギョーザと甘酒入り牛乳寒天。参加費のほかNPO法人ホットライン信州(松本市)から食材や菓子などの提供を受け、手作りの温かい食事を出した。
子どもたちはおもちゃで遊んだり、絵本の読み聞かせを楽しんだり、和やかなひとときを過ごした。持ち寄りで子ども服などリユース品を並べ、必要な人に持っていってもらうコーナーも設けた。
初めて訪れた松本市高宮の松浦彩子さん(32)と明花ちゃん(1)は「子育てしながら食事の用意は大変なので、1食でも作ってもらえると助かる。ほかのお母さん、お子さんとも交流ができ楽しかった」と話していた。
きっかけは県内の母親グループ「ゆめサポママ@ながの」が開いた、こんなことできたらいいな、という夢を語り合う「妄想会議」。そこで出会ったメンバーが、不登校の児童生徒が増えていることや、長野県の未成年者の自殺死亡率が高いことを知り、子どもを含めた地域の居場所を作れればいいな、と「妄想」を広げ、こども食堂につながった。
代表の矢島美咲さん(41)=松本市笹賀=は「子育て中の母親だけでなく、不登校の子や地域のお年寄りなど幅広い年代の人に来てもらい、昔の遊びや郷土料理を教えてもらったり、子育ての相談に乗ってもらったり、世代交流の場にもしていきたい」と話す。
月1回、継続して開く予定で、次回は1月29日午前11時~午後2時、波田公民館で開催。参加費大人200円、子ども無料。運営メンバーも募集している。問い合わせはappletree.matsumoto@gmail.com、フェイスブックhttps://www.facebook.com/appletree.matsumoto/
(丸山知鶴)

塩尻の90歳竹澤さんが常光寺に平和観音建立

塩尻市片丘の竹澤彌(わたる)さん(90)が、菩提(ぼだい)寺の雨宝山常光寺(片丘)境内に「平和観世音菩薩(ぼさつ)」の仏像を建立し、10日に開眼法要が営まれた。竹澤さんは戦時中に満蒙(まんもう)開拓青少年義勇軍として旧満州(現中国東北部)に渡り、シベリア抑留も経験。戦友らの供養と平和のために手を合わせる。
平和観音は石の座像で高さ約2メートル。隣に建てた石碑に世界の平和と人々の幸福、戦没者の冥福などを祈る文章を刻んだ。
竹澤さんは1942(昭和17)年、14歳で当時の満州国に渡り、旧ソ連軍と国境で戦い九死に一生を得た。終戦後はシベリアに3年半抑留され、その間に多くの仲間を失った。「彼らの犠牲の上に今の自分がある」と竹澤さん。
一緒に生還した戦友の多くが亡くなり、存命の人が少なくなってきたことから「すべての仲間を供養したい」と今春、仏像の建立を決め、常光寺住職の中島宥性さん(73)に相談して快諾を得た。
開眼法要には竹澤さんや同寺の総代ら約30人が参列。経を唱えたり御詠歌を歌ったりし、線香を供えた。中島さんは「平和についてもう一度考え直さないといけない時に、竹澤さんが気持ちを込めて観音さまを建ててくれた」と感謝した。
竹澤さんは「北朝鮮が日本の脅威になっているが、戦争は二度と繰り返してはいけない」と力を込めた。
(浜秋彦)

エクセラン高が社会貢献で受賞 震災考える活動6年

エクセラン高校(松本市里山辺)環境科学コースの生徒が取り組むプロジェクト「長野から『フクシマを忘れない』」や地域の自然環境保全活動が、中高生らの優れた社会貢献活動を表彰する「第21回ボランティア・スピリットアワード」北関東・信越ブロックでブロック賞に次ぐコミュニティ賞を受賞した。15日は、JR松本駅前で開く「冬のキャンドルナイト」で、廃油から作ったキャンドルとクズのつるで作ったリースを配る。
プロジェクトは、東日本大震災発生後の2012年度から、同コースの2、3年生約40人が代々、活動を引き継ぎ6年目。学校で育てた鉢花を販売した収益金や花の苗、種などを福島県の被災地に送ったり、松本の避難家族と交流会を重ねたりしている。放射性物質の影響で、故郷の野山に入ることができなくなった現地の小学校には、薄川の土手で駆除したクズのつるや里山で拾った松ぼっくりをクリスマスリースの材料として送っている。
アワードの受賞は、7年連続。12年と15年はブロック賞を受賞し、全国表彰された。今年は同プロジェクトの約6年間の成果と、災害時に実用可能な自然エネルギーの活用法を発表し、中信地区では唯一、コミュニティ賞を受賞した。
環境科学コースでは、原発事故以降、毎年、地域住民や生徒を対象に放射線に関するアンケート調査を実施。本年度は生徒330人に行い、原発事故への不安や6年間で変化した意識の違いなどを調査しまとめた。
調査から見えたのは、震災に対する意識低下と放射能に関する関心の低さだった。原発は現在、日本の電力の1%ほどしか担っていないが、30%の生徒が今も電力の大半を原発でまかなっていると回答していた。
そこから、現在の暮らしや災害を見つめ直した。災害時に期待される再生可能エネルギーについて考え、木質バイオマスや太陽光を利用したエコクッキングを実践。手作りしたロケットストーブで松枯れした間伐材やもみ殻燃料を使った炊き出し体験を行った。
群馬県高崎市で開いた表彰式に出席した3年生の大槻太一さん(18)は「震災から6年経った今、これからの生活やエネルギーについて考えることが“フクシマ”を忘れないことにつながると思う」。
15日は午後5時から、松本駅お城口広場で、手作りキャンドルとリースを各50個程度来場者に配る。市内の小学生が作った竹筒に明かりをともし、地球温暖化防止や環境保全を地域の市民団体と共に考える。
(高山佳晃)

社会の仕組みを学ぶ「こどもしおじり」開催

子どもが職業体験を通じて社会の仕組みを学ぶ催し「こどもしおじり」が9、10日、塩尻市民交流センターえんぱーくで開かれた。昨年に続き2回目。小学3年~中学生の137人が参加し、大人は原則立ち入らない架空の街「こどもしおじり市」で働いて税金を納めたり、選挙で市会議員を選ぶなどした。(小林和男)
参加者は受付で1000円を、街で通用する架空通貨「じりぃ」(以下J)100Jと交換。税金は1日5Jの参加税と収入の10%。税金を納めないと次の仕事に就けない|などのルールがある。
就業先は花、パン、文房具、美容室などの商店や市役所、郵便局、銀行などの公共機関を合わせて29ブース。参加者の大半がまずハローワークへ向かい、求人数70余の狭き門を突破して職を得た子どもが働き始め、あぶれた参加者は昨年預金したJを引き出しに銀行を訪れたり、税務署で税金を納めたり。
パソコンやビジネスマナーの研修などを行うアカデミーも11ブースあり、そこでキャリアアップすると給料が10%上がるため、そちらに向かう子どもも。
初日の午後には市会議員選挙の立候補者受け付けがスタート。すでに昨年に選挙で選ばれた任期2年の百瀬千宙市長(10、大門泉町)と市会議員3人がおり、今回は定数6の市議の欠員3人を選出。立候補者は顔写真を撮り、公約を載せたポスターを掲示した。
選挙管理委員会の向かいで開かれた市議会では、余ったJを別の参加者に譲る際の「贈与税」について議論が交わされた。

2日目は参加者が街や仕事にも慣れ、店やゲーム、飲食にも活気が。4つの店が起業し、フリーマーケットが開かれ、市議選の立会演説会や投票もあった。
催しは市内のNPO法人「わおん」が提案して市が主催。今回は160人の参加希望があり、限度いっぱいを受け入れた。企画や運営を担った「わおん」の山田勇代表は「大人の影響を極力少なくし、自主性を大切にした。子どものキャリア教育でもある」と話した。
(小林和男)

松本のピザ店オーナー赤羽さんが技術大会優勝

松本市大手4のピザ専門店「ピッツェリア アレッタ」のオーナー、赤羽勇治さん(27)は、音楽に合わせてピザを回す技術を競う「ジャパン・ピザ・エキスポ2017」のシングルアクロバット部門で優勝した。生地を延ばす技術はもちろん、パフォーマンスやそのオリジナリティーが評価された。生地をどれだけ大きく延ばせるかを競うグランデ部門でも準優勝し、ゆくゆくは世界の舞台で-と意気込む。
大会は11月18日に栃木県内で開催。米ラスベガスで開く国際大会で4連覇を果たすなどの実績がある赤荻一也さん=同県=が代表を務める「レッドジャパンピザ職人協会」が主催する。
シングルアクロバット部門で赤羽さんは、前半は生地を1枚、後半は2枚使うなど独自性、スピードを重視した構成。アップテンポの曲に合わせ、足の下をくぐらせたり、腕の上を転がしたりと、生地を自由自在に操り、会場を大いに沸かせた。
グランデ部門は、500グラムの生地を、道具を使わずに5分間でどのくらい大きく延ばせるかを競った。
ジャパン・ピザ・エキスポは2012年にスタート。赤羽さんは赤荻さんにあこがれ、その年の大会に出場し、優勝を果たした。その後、赤荻さんの下で修業するなどピザ職人の道を歩み始めた。
今回は、上位に入れば店のPRにもなると出場。「うれしい気持ちもあるが、今は来年も頑張ろうという気持ちが強い。ゆくゆくは世界に挑戦し、タイトルを取りたい」と話す。
優勝記念の「ピッツァ職人体験パーティー」も16日午後3~5時に同店で開く。5歳~小学生とその親が対象で、ピザを延ばして好きな食材をトッピングし、焼いて食べる。親子ペアは3000円。子ども1人追加ごとに1500円。大人1人の場合は2000円(いずれもオードブルとワンドリンク付き)。同店は縄手通り沿いにある。電話0263・88・7412
(八代けい子)

明科の古根さん東京五輪に向けアイスランドをモチーフにした振り袖制作

2020年の東京五輪に向け、世界各国をイメージした着物を作るプロジェクトが進んでいる。安曇野市明科の友禅作家、古根香さん(44)も参加し、アイスランドをモチーフにした振り袖を手掛けた。海と氷河を表す青、かわいらしい顔つきの渡り鳥、短い夏を彩る花々-。完成した振り袖は11月23日、都内で開いた制作発表会で披露された。
東京五輪に向けて「世界は一つになれる」というメッセージを伝えたいと、世界の着物を作る「キモノプロジェクト」が始まったのは14年。福岡県久留米市の呉服店を経営する高倉慶応さんの発案だった。これまでに69カ国の着物が完成した。
古根さんが同プロジェクトに関わったのは今年2月。友禅を学んだ坂井教人さん(神奈川県鎌倉市)から声がかかり、いくつかの候補から「自然が豊かなイメージ」のアイスランドを選んだ。
それから猛勉強が始まった。インターネットや書籍で資料を集め、「火と氷の国」と呼ばれる同国は、厳しい自然環境の中で短い夏にルピナスやアイスランドポピーが咲き、国鳥のシロハヤブサや渡り鳥のパフィン、アイスランドホースなどがたくましく生きていることが分かった。
「安曇野に住んでいるだけに、豊かな自然のイメージを膨らませることができた」と古根さん。夏ごろにデザイン画を描き、2カ月余りで氷割(ひわり)という地紋がある絹に絵を描き込んだ。
「思いっきり描きました」という右袖は前にシロハヤブサ、後ろにパフィンとアイスランドホース。左袖には国旗の赤い十字を描いた。前身頃には咲き誇る花々。海と氷河を表す青に動物や鳥の目が印象的だ。「初めて振り袖を描いた難しさと、国を表現するという重圧を感じながらの作業は大変だった」と古根さん。それでも「日本人から見たその国のイメージを着物という形で表現できるのはおもしろい。日本ならではのおもてなしで、そこに関われてうれしい」と喜ぶ。

古根さんは安曇野市出身で、短大卒業後、絵を描くことを仕事にしたいと鎌倉の坂井さんのもとで働きながら手描き友禅を学んだ。04年に地元に戻って「友禅工房香庵」を開設し、着物や染額、小物などを制作。日本現代工芸美術展や日展に入選するなど、活躍している。
キモノプロジェクトは個人や法人の寄付により、20年までに196カ国の着物を制作する予定。全国の作家や老舗企業が携わっている。どんな形で東京五輪に関わるかは決まっていないが、参加国の着物が一堂に会する場をつくろうと活動している。
(井上裕子)

松本第一高食物科3年生が卒業記念作品展

松本市の松本第一高校は2、9日、食物科3年生(2クラス、68人)の卒業記念作品展を同校で開いた。入学以来、調理師を目指してきた3年生が、一人ずつ自分の作りたい料理のフルコースを手掛け、訪れた保護者や在校生に実習の成果と腕前を披露した。
3年間の集大成として開き21年目。今年は和洋中のほかカフェや製パン、創作料理など新ジャンルに挑戦する生徒が目立った。料理の器や盛り付けにも工夫が見られた。
2日は5組の34人が早朝から調理室で料理を仕込み、昼の見学会に合わせ奔走した。
両親が市内でそば店を営む川船龍星さん(18)は、そばガレットのスモークサーモンサラダ、そばスープ、そばクレープなど全ての料理にそば粉を使った創作料理を作った。野球部のエースとして活躍し、「3年間、支えてくれた両親への感謝の気持ちを料理に込めました」。
柔道部で全国高校総体に出場した百瀬敦也さん(18)は「スポーツ栄養」をテーマに、ブリの和製カルパッチョ、ゆで豚のステーキ、白菜と鶏肉のグラタンなどジャンルにとらわれない多彩な料理を披露した。
「豚肉はビタミンB2が豊富で、疲労回復にお勧め。タマネギやニンニクと一緒に食べると吸収力がアップする」と食材の効能も紹介した。
1年目から日本料理の外部講師として指導してきた勝野武昇さん(73)は「高校生が作ったとは思えないほどの出来栄えで、年々レベルが上がっている。全員が時間内に料理を作り終えたことも評価できる。卒業しても自信を持ってそれぞれの道で頑張って」とエールを送った。
(高山佳晃)

社会人野球チーム発足へ準備 松本のトレーナー宮入さん

松本市柔剣道場(中央4)内のトレーニング室で「スポーツクラブラフ」を営むスポーツトレーナーの宮入正太さん(37)が、社会人の硬式野球チームを発足させようと準備中だ。中信地域で活動するチームがない現状も踏まえ、「野球をやりたい人の受け皿になれれば」と、選手や指導者など、協力者を募っている。
選手は高校生以上が対象で、技術レベルは問わない。練習は来年1月から週1回以上を予定。冬場でもあり、当面は宮入さんが営むジムや松本市野球場の室内練習場で、身体能力の向上に重点を置く計画だ。
宮入さんはゼネラルマネジャーとトレーニングコーチに就く。スポンサーを探したり、資金繰りを含めたチーム運営法を学んだりと動いており、本年度内にチームとしての体裁を整え、社会人野球を統括する日本野球連盟に登録したい考えだ。
若い世代の競技力向上やスポーツ愛好者の増加を目指し、数年前から市内の高校に出向いてボランティアで運動部の指導も行う宮入さん。「学校を卒業した途端、プレーの場は意外に少なくなってしまう」との懸念を持っていたという。
自身も小学生時代、少年野球チームでプレー。競技人口の減少も叫ばれる中、子ども向けの教室など普及や地域貢献活動にも取り組みたいとし、「地域に根差した環境で、多くの仲間と野球ができればいい」と話す。
(長岩将弘)

王滝村の滝越地区 観光資源を発掘し“秘境”PRへ

王滝村の滝越(たきごし)地区の観光資源を発掘し“秘境”としてPRしていこうと、木曽郡出身者などの有志が「木曽の秘境落人(おちうど)の里木曽王滝滝越を愛する会」を発足した。村も御嶽山以外の観光にと滝越に着目。村役場からさらに8キロ離れたのどかな集落に、新たな誘客の可能性を探り始めている。
「愛する会」は、木曽町出身の郷土史家、楯英雄さん(81、塩尻市大門三番町)が世話人となり、林野庁OBや風景写真家など5人で発足。11月21、22日に現地見学と意見交換会を開いた。
滝越の歴史的、自然的価値に着目する同会は21日、日本の近代産業発展を担った王滝森林鉄道の「白川鉄橋」跡地や、1944(昭和19)年、中国人労働者が建設に携わった「滝越ダム」、日本二百名山の一つ「小秀山」の登山口などを見学。宿泊先の三浦屋旅館で、同館経営者の三浦幸二さん(80)、地域おこし協力隊員の石黒力也さん(36)と倉橋孝四郎さん(33)らを交え9人で観光客を呼ぶための方法や、滞在中の楽しみ方について意見交換会をした。
楯さんは、滝越には鎌倉時代に北条氏に滅ぼされた落人の伝承があることや、手つかずの自然、貴重な遺構が残ることで「秘境としてブランド化する地にふさわしい」と提案。協力隊員の倉橋さんは、集落内の「自然湖」で民間事業者が行うカヌーツアーが定着してきていることや、起業を志す若手も数人いることなど、将来に向けた動きを報告した。三浦さんは、県西部地震の数年前に開園した観光施設「水交園」は当初、大変にぎわったが地震を機に来場者が激減した経緯などを説明した。
22日は県西部地震で被災した濁川周辺を見学。木曽森林管理署職員の案内で治山事業による復旧に感心し、「県最大の土石流災害を風化させないため『災害遺産』として多くの人に知ってもらう必要がある」と観光ルートの一つとして見学会が可能か考えた。
「愛する会」は来年、活動の第1弾として「自然湖」をテーマにした写真展を滝越で開くことを計画。楯さんは「山や川を守る意味でも重要な集落。観光客が訪れ、若者が定住できるようサポートしていきたい」。
村も御嶽山の噴火以来、御嶽山だけに頼らない観光施策を模索し、滝越に着目する。住民や観光関係者などで検討委員会をつくり、今後について検討を始める予定だ。

「滝越」の再生で期待がかかるのが地域おこし協力隊員だ。倉橋さんと石黒さんは、静岡県出身の兄弟で、集落支援担当として移住した。
倉橋さんは3年前から協力隊として活動し、この秋から営業担当として、村役場から離れた場所にある滝越の住民と他地区をつなげる役割を担う。
石黒さんは、倉橋さんの声かけでこの夏から協力隊に。料理人の経験を生かし郷土料理やジビエ料理を担当。魚釣りや食堂のある村営施設「水交園」で新メニューの提供も始めている。
2人は今後、「水交園」を拠点にした観光策を充実させていく予定で「ここで暮らす皆さんは生き抜く力や知恵がすごくある。自分たちもそれに学び地域に貢献したい」。
2人の“相談役”となっている三浦さんは「若い人の力に期待している。まずは生活基盤をしっかりつくってもらい、その上で住民と助け合い、意見を出し合い、滝越を次世代に残すため共に活動していきたい」と話している。

【王滝村滝越地区】国道19号から約30キロ、岐阜県下呂市との県境にある県最西端、世帯数12戸の集落。1984(昭和59)年、県西部地震で御嶽山南斜面の大規模崩落「御嶽崩れ」の被災地でもある。オートキャンプ場や釣り堀、食堂などを設けた村営施設「水交園」、自然湖のカヌーツアーがあり、村観光総合事務所によると今年の利用者は約3000人。
(井出順子)