月別アーカイブ: 2016年6月

グッズ開発秘話 事業本部企画部の塩川さんに聞く

160630yamp山雅を応援する気持ちを高めるグッズ。Jリーグ入り以降、クラブはホームゲームごとに新商品を発売し、その点数は色やサイズの違いなども含めると、ざっと1000点に上るそうだ。しかし、中には売れ行きが芳しくなく、在庫を抱えてしまっている物も…。事業本部企画部で公式グッズ開発を担当する塩川由貴さん(25)に、そんな知られざる商品とともに開発の苦労話を聞いた。
最も大事にしているのはお客さんの声。スタジアムの売店で見聞きする反応や、メールなどで寄せられる意見・要望を基に、季節感やホームゲームで行うイベントとの連動も考え、商品を企画するという。
ただ、「結局、売り出してみないと分からない。過不足のリスクは常にある」と塩川さん。
売れなくてもいけないが、欲しい人に行き渡らない事態も避けたい。製造コストとの兼ね合いもあり、「ニーズを読み切るのは本当に難しい。なかなかうまくいかないが、精度を上げる努力は続けている」。
今季は「選手グッズくじ」(1回300円)を発売。選手・監督の顔写真を1人ずつあしらったキーホルダーや缶バッジが当たる。
手頃な価格や「好きな選手を引き当てたい」という意欲をあおる要素もあってか好評。「これまであまりなかった、個々の選手をテーマにした商品も企画していければ」という。
スタジアムではもちろん、街を歩いている時などにグッズを身に付けた人を目にすると「日常生活に溶け込み、身近に感じてもらえているのがうれしい」と塩川さん。やりがいを胸に、より愛される商品開発に励んでいる。

【カーサンシェード】
車内の温度が上がるのを防ぐ「カーサンシェード」(日よけ)は14年夏に発売。中央に山雅のエンブレムとロゴをあしらった、インパクトがあるデザインだ。
車の内側から吸盤でフロントガラスに貼り付け、使わない時は折り畳んでおく。使用時のサイズは横125センチ、縦57センチ。
松本のような地方都市で車は欠かせない移動手段。これまで売り出したグッズの中でも、ステッカー類をはじめカー用品は人気が高い。サンシェードについても発売以前から要望があったという。
反町監督や選手たちからも「売れそうだね」と声を掛けられたといい、「満を持して発売!という感じだったのですが…」と塩川さん。
コストの制約もあり1サイズだけ製造・販売したため、「もしかしたら使いづらいサイズだったのかも」と推測するが、車用品専門メーカーの製品で品質は高い。
「日差しが強いこれからの時季は役立つはず。ぜひ使ってください」。1800円。

【レトロシャツ】
山雅草創期のユニホームを模した「レトロシャツ」は、クラブ創設50周年でもあった昨年の8月、記念グッズの一つとして発売した。
海外メーカーと協力し、完全オーダーメードで半年ほどかけて開発した。「このデザインに思い入れのある人もいるはず。記念グッズでもあり、力を入れました」と塩川さん。
創設時のOBからユニホームの実物を借り、メーカーに送り分析。生地の質感や独特の厚みなどを可能な限り再現した。色にもこだわり、襟や袖口の黄味がかった白色も生地の色ではなく、わざわざ染めたもの。胸の「山雅」や背番号「12」といったワッペンは既存の書体でなく、レトロシャツ専用のオリジナルだ。
創設当時、左胸のワッペンが手違いで「山稚」になってしまったとのエピソードもある。数ある歴代ユニホームの中から「物語性を含めて楽しんでもらえれば」と、このデザインを選んだ。
ただ、思ったほど売れず、塩川さんは「必ずしも万人に受けるものではなかったようで…」。
それでも「好評もいただき、思いは届いたのかなと感じる一方、数量を売らなくてはいけない難しさも感じた商品」と話す。
「再生産しないので、在庫があるうちにぜひ手に入れて」とPRする。S、M、L、LLの4サイズ。色はチャコールグレーもあり。各5000円。
(長岩将弘)

J2第19節 飯尾プロ初ゴール 山形に1-0「我慢比べ」制す

160621yamp

J2は12日、各地で第19節のうち10試合を行った。前節まで暫定5位の山雅は同10位のモンテディオ山形とアルウィンで対戦。最終盤に得点し1-0で競り勝った。時折強まる雨の中、互いに決定機まで持ち込ませない「我慢比べ」(山雅・反町監督)を飯尾のプロ初ゴールで制し、前半戦最後のホームゲームを4試合ぶりの完封勝利で飾った。
反町監督が試合後、「今季ここまでで一番苦しい試合だった。それだけ我慢強く戦わなければならなかった」と振り返った通り、終盤まで一進一退の攻防が続いた。
山雅はここまで全試合に先発出場していた當間に代わり、後藤が今季初出場。それでも守備の連携に大きなほころびはなく、両サイドを軸とした相手の攻撃をはね返し続けた。
一方の攻撃は高崎、工藤らがゴールに迫るが、山形GK山岸の好守にも阻まれ、互いに無得点で折り返した。
後半も競り合いが続いたが、中盤の出足が鈍り始めた相手に対し、山雅がじわじわと攻撃の機会を増やしていく。
試合が動いたのはロスタイム突入直前の45分。喜山の正確なロングボールをペナルティーアーク付近で受けた山本が、右サイドを駆け上がり追い越していく飯尾へ絶妙なパス。飯尾は冷静に遠いサイドへ蹴り込み、決勝点をもぎ取った。
田中が右目の網膜剥離で離脱し、飯尾が右ウイングバックで先発して3戦目。田中がリーグ全試合で先発した昨季は、本職ではない左で6試合(うち先発5)出場にとどまったが、チームの支柱を欠く緊迫した局面で、4年目の生え抜きの初得点が試合を決めた。
飯尾は「あの時間帯でも走り切るのが自分の持ち味。今まで何度も外して悔しかったが、やっと決められた」と充実の表情。
「主力も脇役もなく、その時々でベストの11人を選んでいる」と言い切る反町監督は「けが人が増えてきた中、こうしたタフな接戦で勝ち点3を取れてうれしく思う」と選手をたたえた。

前節までの3試合は全てCKがらみで失点していた山雅。指揮官は「相手にCKを与えなかったのがよかった」と自嘲気味に振り返ったが、苦しい試合でも安易にCKを与えず、高い守備意識を保った点は収穫だ。
Jリーグ入りした12年以降、8戦未勝利(5分け3敗)だった山形に初めて勝ったのも大きい。飯田は「(対戦成績は)気にしていなかった」としながら、「今回は力の差を感じなかったし、主導権を握った時間帯もある。過去の成績を抜きにしても、手応えを感じる」とうなずいた。
次節からは、前半戦を締めくくるアウェー2連戦。敵地でもチームの総合力を示したい。
(長岩将弘、大山博)

シーズン折り返し間近 18節までを振り返り、今後を展望

160616yamp1年でのJ1復帰を目指し、2年ぶりにJ2で戦う松本山雅FC。シーズン折り返しに近い18節を終えた現時点で9勝5分け4敗、勝ち点32の5位と、1~6位が勝ち点4差内にひしめく上位で戦い続けている。年間2位でJ1に自動昇格した14年シーズンと比較しながら、ここまでの戦いを振り返り、今後を展望する(熊本地震の影響で8節以降の順位は暫定)。
昨季J1で苦しんだ経験から、今季は縦への速さやセットプレーといったこれまでの武器を維持しつつ、パスをつないで崩す新たな攻め手にも挑戦。
シーズン序盤こそもたついたが、7節(4月9日)から3連勝で浮上し、12節(5月7日)~18節(6月12日)は5勝1分け1敗でJ1昇格プレーオフ出場圏の6位以内を維持している。
しかし、今季もフル出場を続けてきた田中が、右目の網膜剥離(はくり)のため今月4日の16節北九州戦後にチームを離れた。8日に横浜市内の病院で手術を受け、長期の離脱は決定的だ。
豊富な経験を持ち、精神的支柱でもある田中の不在をどう乗り切るか。今後の戦いの鍵になりそうだ。

「スタートダッシュ」を掲げて成功した14年に対し、今季序盤は新スタイルの確立に苦しみ、もたついた。
熊本との開幕戦はPKで失った1点を守り切られ黒星。ホーム開幕の4節千葉戦は、終始主導権を握りながらゴールが奪えず、逆に少ないチャンスを確実に決められ0-1で敗れた。
ホーム連戦で盛り返したかった5節山口戦は1-2から逆転したが、残り1分を切って同点とされ3-3の引き分け。選手に対し観客席から厳しい声が飛んだ。
しかし、7節徳島戦から3連勝し、12節東京V戦からは引き分け一つを含めて6戦無敗と、チーム状態は上向きに。
16節北九州戦、17節札幌戦はともに2-0から反撃を受けて失点する展開だったが、リードを守り切ったり、追加点で突き放したりして、きっちりと勝ち点3を獲得。シーズン序盤に希薄だった勝負強さを身に付けた。
特に札幌戦は当時9戦無敗で首位を走っていた相手の勢いをそぎ、勝ち点1差の2位まで浮上。選手は自信と手応えを得た。

14年は18節を終えた時点で10勝4分け4敗、勝ち点34で3位。総得点27、総失点16だった。今季の特徴は失点の少なさだ。ここまで総失点は札幌、町田と並ぶリーグ最少の13。無失点は9試合、2失点以上は3試合と守備は安定している。
反町監督は「J1と比べ相手のミスやシュート精度の低さに救われている部分もある」と指摘するが、昨季のJ1での経験をうまく生かして戦っているとも言える。
一方で攻撃はもう一歩。総得点24は9位山口、8位千葉より少ないリーグ7番目。上を目指すには物足りない数字だ。
昨季チーム得点王のオビナが開幕直後の3月3日、練習中に左足じん帯を痛めて離脱したのをはじめ、序盤はけが人続きで前線が人数不足に。J1鹿島から急きょ獲得した高崎が苦境を救い、ここまでチーム最多の5得点。次いで工藤、山本が4得点と、攻撃陣にゴールが増えつつあるのは好材料だ。

一方で、先が見えない田中の状態は気がかりだ。南省吾テクニカルダイレクターによると、手術は成功したが安静状態。さらに手術が複数回に及ぶ可能性もあるとし、「今は復帰の時期を議論できない」と表情を曇らせる。
けがの那須川が17節札幌戦で戻り、18節岡山戦で安川が今季初出場、安藤の復帰も間近とみられ、陣容が整いつつあっただけに衝撃は大きい。
反町監督は「けがや故障はいつ、誰にでも起こり得る。常にそれを想定してチームマネージメントをしている」と言うが、大黒柱を襲った事態に「青天のへきれき」とショックを隠さなかった。
指揮官は「(田中の)貢献度が高いのは確かだが、いないから勝てないと言われたくない」。上位は混戦の度合いを深めており、チームの総合力がいっそう試される。

直近3年間に自動昇格した2位の最終勝ち点を見ると、13年が83(神戸)、14年も83(山雅)、15年が82(磐田)。単純に比較できないが、80以上が一つの目安になりそうだ。山雅は14年と同じ勝ち点を目標にすると、残り24試合で51の積み上げが必要。1試合平均2では届かない。
今季初めて自動昇格圏内につけた札幌戦後、指揮官は「まだ昇格どうこうと言える段階ではないし、われわれはまだまだ力不足」ときっぱり。「自分たちに目を向け、日々の練習の中で問題を一つずつ解決し、力量を上げていくだけ」と話した。
14年はシーズン後半最初の22節で2位に上がり、最後までその位置を譲らなかった。足元を見据え、勝ち点を積み重ねていけるか。今季も間もなく、山雅が得意とする夏場の戦いを迎える。
(長岩将弘)

J2第16節 3連勝で上位対戦へ 北九州に2-1

160607yampJ2は4日、各地で第16節を行った。前節まで4位の山雅は21位のギラヴァンツ北九州とアルウィンで対戦し、2-1で勝った。9日間で3試合をこなす過密日程の初戦を競り勝ち、今季2度目の3連勝。5試合ぶりの失点を喫したが、白星で上位との対戦が続く次節以降に弾みを付けた(順位は暫定)。
前半序盤の一進一退から14分、右CKを相手GKがたたき落とし、後方で拾った岩間がドリブルで持ち込みシュート。ボールはGKの左手を弾いてゴールに吸い込まれた。
先制してリズムをつかんだ山雅はその後も好機をつくるが、加点できず前半終了。
後半も山雅が攻勢を続け16分、宮阪の右CKに遠いサイドへ走り込んだ當間が頭で合わせ、待望の追加点。
ところがその後は徐々に北九州のペースに。選手や並びを替えて攻撃に人数を割いた相手に山雅は後手に回る場面が目立ち、34分に左CKに合わせられ、今季初めてセットプレーから失点。終盤まで押し込まれたが、しのぎ切った。
主導権を奪われたことについて反町監督は「サッカーはメンタルスポーツ。あの時間帯に2-0になり、少し安心した部分はあるだろう」としつつ、「(1点を返した相手が)3失点目を防ぐより、2点目を奪いにきた。仕方ない面もある」。
選手も課題より勝ち点3を前向きにとらえる声が多かった。岩間は自らのゴールで勝ち越したものの、追い付かれて白星を逃した5節・山口戦を振り返り、「難しい試合を勝ち切れたことに、あのころよりチームの成長を感じる」とうなずいた。
山雅は3位に浮上し、中3日で首位の札幌と、さらに中3日で4位の岡山と対戦する。
「勝って反省することが大事」と決勝点を挙げた當間。慢心せず、連戦中にJ1自動昇格圏の2位以上をうかがう。
(長岩将弘、田中信太郎)

育成が開く未来 昨年までトップ指導の2コーチに聞く

160602yamp

JFL時代から昨年まで共に5年間、トップチームのコーチを務めた柴田峡さん(50)、GKコーチだった本間康貴さん(32)が今年からユースアカデミーに移り、育成年代を指導している。トップの指導経験者が育成に携わるのはクラブ初。「育成元年」に懸ける意気込みを表す体制だ。二人に育成への思いやここまでの手応え、課題を聞いた。

【柴田峡さん・ユースアドバイザー・U-15監督】

-育成年代の指導を引き受けた理由は。
「山雅に来た時から、トップチームは盛り上がっているが育成は時間がかかりそうだと感じていた。育成スタッフもかなり苦労していたと思う。
私は指導者のキャリアを育成から始め、15年ほどを育成の現場で過ごしてきた。ある程度勝手が分かっている。
クラブが育成強化を打ち出し、そのスピードをいかに早めるか、そのために自分に何ができるかを考えた」
-現在の仕事は。
「新設のユースアドバイザーと、U-15(中学年代)監督を兼ねている。
アドバイザーは同じ肩書きの岸野靖之さんと共に、全ての年代の指導を方向付けする。年代別に分担し、岸野さんが松本大(指導者派遣)とU-18(高校年代)、私がU-15とU-12(小学生)を見ているが、私は中学3年生が翌年所属するU-18の状況を把握するし、逆に岸野さんも小・中学年代に携わる。
時間の9割をU-15に割いているが、軸足を置くのでなく、全体の中で部分を担当しているというスタンス。そのほうが育成組織はスムーズに動く」
-中学年代の重要性は。
「最も多感な時期で、心も体も大きく変化する。高校年代で飛躍する子もいるが、中学生のうちに一つでも多くのものを獲得させ、次のカテゴリーに送らなくてはならない。
特に大きいのは『心』の部分。この年代でサッカーを嫌いにさせてはいけないが、大切に扱いすぎてその後の厳しい競争に入っていけなくても困る。ケアの仕方が大事だ」
-いち早くトップチームへ選手を送り出すための、育成の現状と課題は。
「スタッフの増強だけで育成を加速させるのは難しい。ハード面の環境をつくりながら、経験豊かな指導者を据える2本立てが必要。時間はかかるが、整えれば子どもたちは成長の軌道に乗っていく。
われわれは自前の練習施設を持っていない。照明付きの人工芝グラウンドだけでなく、練習に通いやすい立地、講義を受けたり食事を取ったりできるクラブハウス、寒い冬に保護者らが暖を取りながら練習を見られるスペースも必要だろう。
これらはサッカー文化の一つ。子どもたちの帰属意識を高め、『この場所いいな、ここでサッカーがしたいな』と思わせることが大切だ。
ソフト面では他地域と比較し、自分たちを相対的に位置付け、何が足りないか、何をすべきかを常に整理しなくてはならない。
ハードが全てではないし、すぐにどうこうできるわけでもない。今できることを最大限やり、例えば15年かかることを12年で成し遂げるような試みを、常にしていかなくてはならない」

【本間康貴さん・ユースアカデミーGKコーチ】

-育成を引き受けた理由は。
「指導者としてはトップチームに携わった経験しかなく、他のカテゴリーにも興味があった。クラブの求めに応え、指導者としての幅も広げられればと考えた」
-現在の仕事は。
「ユースアカデミーでただ一人のGKコーチ。小学生~高校年代に加え、松本大とスクール(普及事業)も見ている。年代別チーム数でいえば10以上ある。同じコーチとはいえトップの指導とは別物。子どもたちに伝える、教える難しさを感じている。
ただ、そのぶんGKの本質について突き詰めて考え、自分の中で改めて整理できた。選手の成長を見る楽しさもあり、驚きと発見の毎日だ」
-トップ選手の輩出に向け、現状と課題は。
「比較材料を増やすため、できるだけ県外の子どもたちを見にいくようにしているが、『後進地域』を痛感する。GKに限らず、どの年代も1、2年は遅れている印象だ。
長野県の子どもだけが体格や素質で劣ることはあり得ない。今までと同じことをやっていても駄目。いろいろな所に目を配り、試行錯誤を繰り返し、危機感を持って取り組む必要がある。
プロ選手に共通するのは、自律して努力を重ね、チャンスをつかんでいく点。GKなら技術以上に『絶対にゴールを取らせない』気迫も大事だ。そういう部分もしっかり伝えていかなければ」
(長岩将弘)