91歳塩尻の百瀬石涛子さんが初句集

現代俳句協会会員で俳句誌「岳(たけ)」同人の百瀬石涛子(せきとうし、本名・正雄)さん(91、塩尻市広丘高出)が初の句集「俘虜(ふりょ)語り」を出版した。岳主宰の宮坂静生さん(79、松本市寿台)が選んだ515句を掲載。近作を集めた「寒極光(=冬のオーロラ)」の項は、シベリア抑留時代を詠んだ作品が多い。
百瀬さんは長い間、抑留当時のことを詠まなかった。「あまりにもつらい体験で、異常な精神状態だった。命を落とした仲間たちのことが頭を離れなかった」
80歳を過ぎたころから「年月を経たからだと思う」と、テーマにするように。それでも「俘虜の名の生涯消えず雪を掻(か)く」と詠む。心のつかえは今も続く。
17歳で少年通信兵に志願。旧ソ連と満州(現中国東北部)国境の守備に就き、武装解除後の1945年秋、ソ連軍の捕虜に。極寒の11月、シベリア奥地に連行され、過酷な森林伐採の労役が2年半続いた。「捕虜も俘虜も同じ意味だが、捕虜とは言いたくない気持ちがある」
いかに異常な状況だったかは「死者の衣を分配の列寒極光」など多くの句が物語る。「あまりに寒く、死んだ人が身に着けていたものであろうが構わない状況。1枚でも多く着たかった」。「逝く虜友(とも)を羨しと垂氷(たるひ=つらら)齧(かじ)りをり」というほどの飢餓状態でもあった。
今は、庭の草花を手入れするのが楽しみの一つ。「捩花(ねじばな)に屈(かが)み今生まだ足らず」の句がある。
花神社(東京)刊。A5判、220ページ。2800円(税別)。問い合わせは百瀬さん電話53・0692
(長田久美子)