雪代の流れ始めた高瀬川(大町市社)

雪解け水の瀬音に春の息吹が漂う高瀬川。残雪の山並みを背景に水面が踊り、安曇野に春を運ぶ=ニコンD3S、ニコンEDAF-Sニッコール28~70ミリ、3月26日

雪解けの季節。安曇野を南に動脈のように流れる高瀬川で、瀬音の奏でる「春便りの詩(うた)」を聞いた。
快晴の中、大町市社の左岸の堤防を散策。雪代が流れ始めた川面に近付くと、春の喜びの息吹に満ちた大自然のコーラスが聞こえてきた。水しぶきがかかりそうなほどの低さに目線を落とし上流を眺めると、春陽を浴びた水面が輝き、激しく飛び跳ねている。その背景に鎮座する残雪のまぶしい山並み。爺ケ岳、鹿島槍ケ岳、五竜岳を経て白馬三山へと続くさまは、壮麗な安曇野の原風景の光彩だ。
川面を眺めていると高瀬川への思いが次々と巡る。爺ケ岳の「種まき爺さん」や鹿島槍ケ岳の「獅子と鶴」の雪形がかすかに輪郭を現し始めた。高嶺(たかね)の雪形を形成する残雪も、やがて雪代となり、この高瀬川を下る。巡る思いは源頭域の天上沢や千丈沢から槍ケ岳(3180メートル)へ。北斜面の水は高瀬川、南斜面は梓川となる。
「槍で別れた梓と高瀬めぐりあうのは押野崎」とうたう安曇節。だが、各種の地図によると梓川は、松本市で奈良井川と合流し犀川となる。安曇野市明科の押野崎で高瀬川と梓川はめぐりあわない…。残念がる記者の目の前で突然、キセキレイがオペラ歌手のような超高音の「コロラトゥーラ」で“春のさえずり”を披露。対岸へ黄色の弧を描いて飛んだ。
(丸山祥司)