雪すだれの松本城歴史に思いはせ(松本市)

激しい雪の中、通り過ぎていった長い時の流れを語るかのような国宝・松本城。はかなく消える雪模様に何世代もの人の命が重なる=ニコンD3S、ニコンEDニッコール28~70ミリ

激しい雪すだれの中で幻想的な雰囲気を漂わせる国宝・松本城。2月上旬の厳寒の夜、墨絵の世界へ誘うような風情を目の当たりにして、城を巡る長い歴史に思いをはせた。
築城当時は「深志城」と呼ばれた。現存する五重六階の天守は日本最古と言われる。四季折々の風格は市民の心象風景だが、一枚の写真で城の全容を表現するのは難しい。栄華を誇る「正」の世界に対し、悔しさや恨み、怨念といった「負」の世界が絡んで見えてくるからだ。
撮影は、激しく雪が降りしきる夜に決行した。「動」の雪に「静」の松本城を対比。雪の流れに人の命、情念、時の流れを重ねた。
脳裏に浮かんだのは、松本藩で起きた「貞享騒動」。1686(貞享3)年に元庄屋の多田加助を中心に起こした百姓一揆で「加助騒動」とも。この年代は太陽黒点が著しく減少した「マウンダー極小期」に当たる。ミニ氷河期、小氷期とも呼ばれ、安曇平の凶作との関連が推測される。
騒動の処刑者は28人。馬に乗り庄屋への伝令役だった16歳の少女「おしゅん」も含まれる。本紙文化面「せせらぎ」の筆者で作詩家の岩淵順子さんが詩を書き中川村出身の作・編曲家、原賢一さん(東京)が作曲した「おしゅん物語」が、雪の松本城に重なって聞こえてくるような気がした。
(丸山祥司)