鎌池錦秋、幻想神秘な絵画の世界(小谷村・雨飾高原)

161027sikip鎌池の水面に映る壮麗神秘な命の輝き。鮮烈に彩るブナ林が有終の美を飾る。命はいつか必ず終わりが来ることを諭すように、秋色に染まる水面を揺らして風が通り過ぎる=10月22日午前、ニコンD3S、ニッコールED300ミリ×1.4倍

ブナ林に囲まれた小谷村雨飾高原の鎌池。水面のカンバスに映し出された錦秋の光彩は、幻想神秘な絵画の世界を連想させる。
池巡りの約2キロの遊歩道を歩く。周辺には推定樹齢200年近いブナも点在。青空にひと際高く、落葉高木のブナ林がワインレッドの秋色の領域をつくっている。林床に息づく落葉低木の光彩も鮮やかだ。朱、赤、紅に彩る樹種は、ハウチワカエデ、ウリハダカエデ、ヤマウルシ。黄色は、イタヤカエデ、アブラチャン、ダンコウバイ、クロモジなど。
ブナの学名は、ファグス・クレナータ。実が食用になり「ファグス」は食べるという意味のギリシャ語に由来する。人の営みに多くの恵みを与え、動物たちを育み豊かな生態系を形成してきた。ヨーロッパでは、ブナは「森の母」と言われ、日本の研究者らは、ブナ林に親しみを込め「母なる森」と呼んでいる。
10月22日早朝、決めた構図の池の端に立った。有終の美を飾るブナ林。木々の葉は、別れの時を知り精いっぱいの彩りが頂点に達した。朝日が林内に差し込むと、鮮烈な光彩に変幻。風がささやく水面に映る“母なる森”の秋色のゆりかごが優しく揺れる。
心のカメラのファインダーを通し、大自然の母に抱かれていると、癒やしと安堵(あんど)感がブナ林の鼓動とともに伝わってきた。
(丸山祥司)