華麗に踊るヒメオドリコソウの「フェッテ」(松本市寿小赤)

160324sikip野外のステージで踊るヒメオドリコソウ。こまのようにクルクル回転するバレエの「フェッテ」のイメージを重ね、バレリーナが見ている光景を表現してみた=ニコンD3、ニッコールED28―70ミリ

3月18日、春陽に包まれた松本市寿小赤のリンゴ畑の土手。ピンクに染まる明るい領域は、ヒメオドリコソウの群落だ。
一足早い春の息吹に目線を泳がせていると突然、奇妙な花の姿に視線が留まった。一輪が、なぜか立ち上がり踊っている。花を見詰めているとクルクルと回転を始めた。どうやらバレエの世界にスイッチが入ってしまった。無意識にカメラを回転し撮影している自分に気付く。
撮影にこだわっているのは「フェッテ」の場面。バレエ用語で正確には「グラン・フェッテ・ロン・ドゥ・ジャンブ・アン・トゥールナン」という。片足のつま先で立ち、もう一方の足を素早く蹴り出して行う回転。
32回転する白鳥の湖の「黒鳥のフェッテ」やドン・キホーテの「キトリのフェッテ」が有名だ。速い鮮やかな回転のニーナ・アナニアシヴィリさん、2014年2月のソチ五輪開会式で優雅に舞ったスヴェトラーナ・ザハロワさん、若手個性派のナタリア・オシポワさん…。次々と思いはめぐる。
記者に、言葉を超えたバレエの表現力の豊かさや奥深さを教えてくれたのは、来日40回、20世紀最高のバレリーナと称されたマイヤ・プリセツカヤさんだ。
野に咲くヒメオドリコソウ一輪に、世界のプリンシパルが踊る華麗な姿を重ね、何百枚撮っても、描くイメージとぴったり合わない撮影にひたすら挑んだ。
(丸山祥司)