華麗に舞う中岳の雪形「舞姫」(北アルプス・中岳=松本市)

160707sikipモルゲンロート(朝焼け)に染まる中岳の残雪の中に黒型(ネガ型)で浮かび上がり、しなやかに踊る雪形「舞姫」。右手が舞扇に届いた時が観望の最適季。今シーズンは3週間ほど早く整った=6月11日、午前4時34分。常念乗越の常念岳寄りから。ニコンD3S、ニコンEDニッコールAFVR80-400ミリ

160707sikip2

梅雨の晴れ間の北アルプス・中岳(3084メートル)に現れる雪形「舞姫」の華麗に踊る姿がリアルだ。6月11日、手前の赤沢山(2670メートル)をステージに見立て、常念乗越(のっこし=2466メートル)から、モルゲンロートに染まる艶(あで)やかな雰囲気の「舞姫」を撮ってみた。
1966(昭和41)年、この雪形を発見し命名したのは、日本の雪形研究第一人者の田淵行男さん(1905~89年)だ。左を向きしなやかに舞う女性の大きな雪形。観望最適季は、例年6月下旬から7月上旬の梅雨の真っただ中。まつげ、鼻、口元の雰囲気がそれとなく見てとれる。1982年夏、田淵さんは自宅での雪形談議で「最高傑作の雪形で、まれに見る掘り出し物」と「舞姫」を自賛していた。
田淵さんは、高山蝶(ちょう)の細密画を描く画才の持ち主だったが、雪形の絵画は一枚もない。著書「山の紋章雪形」には、雪形研究のため設立した「信濃雪形株式会社」のメンバーだった山岳画家の加藤淘綾さん(1901~87年)の絵画「舞姫」が掲載されている。
雪形と向かい合う田淵さんは、写真家に徹し、画家にはならなかった…と、常念乗越の昼下がり「舞姫」を眺めながら偲(しの)んでいると、ハイマツの上を高山蝶のタカネヒカゲが舞った。「田淵先生…見えますか」
(丸山祥司)