育成が開く未来 昨年までトップ指導の2コーチに聞く

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JFL時代から昨年まで共に5年間、トップチームのコーチを務めた柴田峡さん(50)、GKコーチだった本間康貴さん(32)が今年からユースアカデミーに移り、育成年代を指導している。トップの指導経験者が育成に携わるのはクラブ初。「育成元年」に懸ける意気込みを表す体制だ。二人に育成への思いやここまでの手応え、課題を聞いた。

【柴田峡さん・ユースアドバイザー・U-15監督】

-育成年代の指導を引き受けた理由は。
「山雅に来た時から、トップチームは盛り上がっているが育成は時間がかかりそうだと感じていた。育成スタッフもかなり苦労していたと思う。
私は指導者のキャリアを育成から始め、15年ほどを育成の現場で過ごしてきた。ある程度勝手が分かっている。
クラブが育成強化を打ち出し、そのスピードをいかに早めるか、そのために自分に何ができるかを考えた」
-現在の仕事は。
「新設のユースアドバイザーと、U-15(中学年代)監督を兼ねている。
アドバイザーは同じ肩書きの岸野靖之さんと共に、全ての年代の指導を方向付けする。年代別に分担し、岸野さんが松本大(指導者派遣)とU-18(高校年代)、私がU-15とU-12(小学生)を見ているが、私は中学3年生が翌年所属するU-18の状況を把握するし、逆に岸野さんも小・中学年代に携わる。
時間の9割をU-15に割いているが、軸足を置くのでなく、全体の中で部分を担当しているというスタンス。そのほうが育成組織はスムーズに動く」
-中学年代の重要性は。
「最も多感な時期で、心も体も大きく変化する。高校年代で飛躍する子もいるが、中学生のうちに一つでも多くのものを獲得させ、次のカテゴリーに送らなくてはならない。
特に大きいのは『心』の部分。この年代でサッカーを嫌いにさせてはいけないが、大切に扱いすぎてその後の厳しい競争に入っていけなくても困る。ケアの仕方が大事だ」
-いち早くトップチームへ選手を送り出すための、育成の現状と課題は。
「スタッフの増強だけで育成を加速させるのは難しい。ハード面の環境をつくりながら、経験豊かな指導者を据える2本立てが必要。時間はかかるが、整えれば子どもたちは成長の軌道に乗っていく。
われわれは自前の練習施設を持っていない。照明付きの人工芝グラウンドだけでなく、練習に通いやすい立地、講義を受けたり食事を取ったりできるクラブハウス、寒い冬に保護者らが暖を取りながら練習を見られるスペースも必要だろう。
これらはサッカー文化の一つ。子どもたちの帰属意識を高め、『この場所いいな、ここでサッカーがしたいな』と思わせることが大切だ。
ソフト面では他地域と比較し、自分たちを相対的に位置付け、何が足りないか、何をすべきかを常に整理しなくてはならない。
ハードが全てではないし、すぐにどうこうできるわけでもない。今できることを最大限やり、例えば15年かかることを12年で成し遂げるような試みを、常にしていかなくてはならない」

【本間康貴さん・ユースアカデミーGKコーチ】

-育成を引き受けた理由は。
「指導者としてはトップチームに携わった経験しかなく、他のカテゴリーにも興味があった。クラブの求めに応え、指導者としての幅も広げられればと考えた」
-現在の仕事は。
「ユースアカデミーでただ一人のGKコーチ。小学生~高校年代に加え、松本大とスクール(普及事業)も見ている。年代別チーム数でいえば10以上ある。同じコーチとはいえトップの指導とは別物。子どもたちに伝える、教える難しさを感じている。
ただ、そのぶんGKの本質について突き詰めて考え、自分の中で改めて整理できた。選手の成長を見る楽しさもあり、驚きと発見の毎日だ」
-トップ選手の輩出に向け、現状と課題は。
「比較材料を増やすため、できるだけ県外の子どもたちを見にいくようにしているが、『後進地域』を痛感する。GKに限らず、どの年代も1、2年は遅れている印象だ。
長野県の子どもだけが体格や素質で劣ることはあり得ない。今までと同じことをやっていても駄目。いろいろな所に目を配り、試行錯誤を繰り返し、危機感を持って取り組む必要がある。
プロ選手に共通するのは、自律して努力を重ね、チャンスをつかんでいく点。GKなら技術以上に『絶対にゴールを取らせない』気迫も大事だ。そういう部分もしっかり伝えていかなければ」
(長岩将弘)