育成が開く未来 指導者の増強、普及で地域と連携

160512yamp山雅の選手育成・普及組織ユースアカデミーが今年、大きな改革に乗り出した。昨季初めてJ1で戦った経験を通じ、クラブは育成環境を充実させる必要性を痛感。活動の柱の一つに据え、未来への投資に取り組む。動き出した新体制の手応えや課題などを、アカデミーを統括する山﨑武ダイレクターの話を基にまとめた。
育成部門は指導者の増強に伴い、体制そのものが大きく変わった。
昨季まで5年間トップチームを指導した柴田峡コーチと本間康貴GKコーチ、当時J2鳥栖の監督などを歴任し、13~14年は山雅U-18(高校年代)を率いた岸野靖之さんら計7人が新たに加わった。全員が山雅以外のJクラブで、トップチームやユースの指導に携わった経験を持つ。
小学生から高校生まで、年代別カテゴリーの垣根を越えて指導する「アドバイザー」を新設し、岸野さんと柴田さんが就任(岸野さんは指導者派遣による松本大監督と兼任)。「プロの世界を知り尽くした2人」(山﨑ダイレクター)に、若手指導者を教える役割も期待する。
指導者が増え、各カテゴリーで試合に合わせた調整や、意図をより明確にした練習、試合のきめ細かい反省などがやりやすくなった。
人員配置も見直し、フィジカル専任トレーナーを置いて、さらなる技術の向上と習得に必要な体づくりを、普段の練習に取り入れる。
また時間の都合がつけば、全員が自身の担当と違うカテゴリーの練習や公式戦を見にいく。課題を共有し、より良くするための議論が日常的に交わされているという。
「カテゴリーを横断的に指導するアドバイザーに触発されてか、スタッフ間で自然にその雰囲気が生まれてきた」と、山﨑ダイレクター。昨年、松本市かりがねサッカー場ができ、練習場所が集約されたことも大きいという。

普及面では、サッカースクールの塩尻校が開校。4月にオープンした塩尻市広丘堅石のフットサル場「綿半フットボールパークFUTSALPOINT(フットサル・ポイント)塩尻」を拠点としている。
にぎわい創出を狙いながら地域貢献、青少年育成も掲げる運営企業と、山雅の思惑が一致。普及の拠点が増えただけにとどまらず、「企業とのコラボレーションという新しい形。これまで県内クラブになかったハードを持てた」と、山﨑ダイレクターはその意義を強調する。
スクールのスタッフだけでなく、アドバイザーを含む育成スタッフが普及に携わるのも、改革の一つ。個人の質を上げるため、トップから逆算して幼少期に何が必要か現場に伝え、落とし込んでいく-という考えだ。

育成各カテゴリーが参加する通年リーグ戦は5、6節まで終え、いずれも上位争いをしている。「結果が全てではないが、取り組みは間違っていない。そのスピード感を、結果や数字で示せているのでは」と、山﨑ダイレクター。
また、3月にはU-18の3人を、J公式戦に出場可能な2種登録にした。トップチームにけが人が相次ぎ、緊急事態の側面があったとはいえ、山﨑ダイレクターは「(トップ出場は)関係者の誰もが、まだ先と考えていた。夢が夢でないと知らしめ、きちんとU-18の選手を見てくれていた反町監督にも感謝」と、うなずく。
一方で明らかになってきた課題は、練習場所の不足だ。
現在はかりがねで、全カテゴリーが時間を区切って練習するが、食事や学習、睡眠など子どもの生活サイクルに配慮すると、練習に適切な時間帯が集中する。
山﨑ダイレクターは「かりがねを補える自前のグラウンドがあればベスト」としつつ、「スクール塩尻校のような形で、地域の力を借りながら解決を探る方法も」と見る。
(長岩将弘)