紅葉の季節に新緑が共演(穂高連峰涸沢カール)

 131029sikip新緑と紅葉が共演。3カ月間の雪解け時期の違いが、春と秋を同居させ夏のない奇妙な光景を際立たせる(8日、涸沢ヒュッテ下部で)

「あのナナカマドはどうなりましたか?」。山岳紅葉シーズンの終わりを迎え、読者から心配する問い合わせが何件もあった。
あのナナカマドとは、8月27日付の四季彩で掲載した「生への執念、凄絶(せいぜつ)な芽吹き」のウラジロナナカマドのこと。
今シーズンの穂高連峰涸沢カールは、例年になく残雪が多かった。雪に埋もれて10カ月。8月、雪解けを待ちきれず雪中で黄金色に芽吹くウラジロナナカマドをルポし掲載。紙面は31日付の信濃毎日新聞朝刊1面の「斜面」で紹介された。
紅葉最盛期の10月8日、あのウラジロナナカマドの前に立つ。衝撃的な光景に言葉を失った。早く芽吹いた群落は、彩りも鮮やかに錦秋の涸沢を謳歌(おうか)している。芽吹きが3カ月も遅れた眼前の株は、葉も小さくまだ新緑の真っ最中。積算温度も日照時間も大幅に足りない。
時折、稜線(りょうせん)から吹き降ろす雪のにおいを運ぶ風が「命もあとわずか」と告げている。それでも新緑の株は、有終の美を飾ろうと生への執念をもやす。雪解けの違いが同居させた春と秋。緑と赤の補色の世界を際立たせ鮮やかに映る光景。胸が痛い。
17日、訪れた新雪で新緑の株は、夏も秋もないまま来春へ命を託した。
(丸山祥司)