生への執念、凄絶な芽吹き(穂高連峰涸沢カール)

130800sikip残雪に埋もれたまま夏の日を浴び、遅れを取り戻すかのように懸命に芽吹くウラジロナナカマド。だが、あと2カ月余りと、はかない命だ(ニコンD3、ニッコールED28-70㍉、PL、19日午前10時)
今夏の穂高連峰涸沢カールは、例年になく残雪が多い。
急登にあえぐ登山道の涸沢ヒュッテまであと500メートルの地点。雪渓上に黄金色の群落をつくる異様な光景が目を引く。ウラジロナナカマドの芽吹きである。「8月も下旬近く。今ごろ?」。不思議に思い近づいてみる。芽吹いたばかりの芽は、夏の日を浴びて黄金色を明るく際立たせている。
雪上に目をやる。雪に埋もれ、重圧に耐え続けて10カ月。雪解けを待ちきれず、すでに雪の中で黄金色に芽吹いている。雪中のわずかな明かりに素早く反応し、光合成ができない状態の中での命懸けの芽吹きだ。
黄金色の芽吹きは、鮮やかなコントラストの美しさを見せながらも、なぜか悲鳴が聞こえてくる。この光景は、命をつなぐ生への執念の凄絶(せいぜつ)な芽吹きであることが、カメラのレンズを通して痛いほど伝わってきた。白い花を咲かせることもなく、錦秋の彩りを添えることもない…。
今芽吹いても寿命はあと2カ月のはかない命。容赦なく冬将軍が命のピリオドを打つ。季節に乗り遅れ、季節にそむいて命をつなぐことはできない。
厳しい自然に立ち向かい、あきらめず芽吹くこのウラジロナナカマド。かける言葉も見つからず、ただ祈る思いでこの場を離れた。
(丸山祥司)