波田のキリシタン伝説が冊子に

旧波田町(松本市波田)の町誌や民話に残されている殉教死したキリシタンの伝承「波田十三経塚の伝説」を、地元の歴史愛好家の男性(名前非公開)が石に刻まれた文字や絵から解読し、冊子「松本藩の一大事キリシタンの殉教徒…極刑」(A4判28ページ・非売品)にまとめた。
この男性(70代)は約10年前、農作業の合間に畔(あぜ)に座って近くにあった平たい石をなでていたところ、刻字の年号や人名が浮かび上がってきて驚いた。波田は火山灰地で石が出ない土地なので、「これは大変なこと」と直感。以来周辺を探し、次々と見つかる石をブルドーザーで集め、一部を自宅に持ち帰り解読を始めた。
長い年月の風化でほとんどが字が薄く、崩し字を見分けるのが最大の難関だったという。歴史専門家や拓本に詳しい人の助言も受けた。「この石には十字架と姫たちの名前がある」「家老から姫たちの供養を頼まれていた西光寺の住職の名前」などと説明する。
男性は「極刑を目撃した村人は姫たちを哀れみ、お上に知られないよう出来事を後世に伝えようと、梓川より運び上げた石に刻んで地中深く埋めたのではないか」と推察。「姫たちのために花を植え水をあげている。判読はこれからも続ける」と話した。

これを知った松本市のキリスト教信者たち12人が5月21日、男性の案内で現地見学会を行った。今年2月、男性が日本キリスト教団波田教会の川本恵子牧師(43、波田)に冊子を渡したことから実現した。
参加者は、男性の説明を受けながら、今は果樹園になっている御殿場地籍の姫たちの住居跡や元松林の処刑地、埋葬場所などを巡った。「体を縛りやすい木で磔刑(たっけい)されたのではないか」などの説明を受けると「最近見た映画『沈黙』と同じような磔(はりつけ)がこの地であったとは」と絶句する人も。
川本牧師は「10年の歳月をかけて解読してくださった並々ならぬ労苦に、キリシタンの末裔(まつえい)として感謝は言い尽くせない。宗教弾圧など決してない、いつまでも自由と平和の世であることを心から祈っている」と語った。
問い合わせは波田教会電話92・8815

【十三経塚の伝説】(波田地区文化財マップより)
江戸時代の初め、松本藩小笠原秀政の家老春日淡路守が波田に住んでいました。寵愛(ちょうあい)していた姫と12人の腰元が禁制のキリシタン信仰を捨てずに処刑され十三の塚に葬られました。以来十三経塚と云(い)われるようになりました。
(谷田敦子)