心理描写豊かな窓霜の世界(松本市・美ケ原高原)

140103sikip昇ったばかりの日を浴びて黄金色の豪華な輝きを見せる窓霜。変幻する自然光が演出するドラマチックで衝撃的な光景が広がる(ニコンD3、ニッコール105ミリマイクロレンズ、美ケ原高原王ケ頭ホテル)

冷え込んだ松本市の美ケ原高原王ケ頭。早朝、ホテルの窓ガラスに「窓霜(まどしも)」と呼ばれる厳寒の季節の贈り物が届く。
一期一会の繊細な造形美は彫刻や絵画の世界を連想させる。曲線と直線が織りなし立体感もある光景は、19世紀末から20世紀初めに欧米各地で流行したアールヌーボーやアールデコの装飾美術の世界が重なり迫ってくる。
窓霜を鮮やかに際立たせ、命を吹き込むのは自然光だ。幾重にも重なった山脈を連想させる窓霜に目線が留まった。薄明から日の出の時刻まで変幻する光を浴びた窓霜の心理描写のドラマを追った。
薄墨色の薄明の空を背景にした山脈の光景を見て、心に衝撃が走った。黒く見える山並みが、東日本大震災の後、取材で訪れた岩手県陸前高田市のがれきの山並みの異様な風景と重なったからだ。
夜明けにいっときだけ見せる群青色の時刻。窓霜は、安堵(あんど)感と明るく希望が湧いてくる“青い山脈”に変わった。
神秘的な日の出が始まる。黄金色に染まり輝く豪華でまぶしい山脈が2020年の東京五輪の金メダルを連想させる。だが、ゴールド一色に染まる中にもわずかに黒ずんで見える部分の窓霜が、五輪に浮かれても大震災の被災地を忘れるなと表現しているように映った。
(丸山祥司)