岸野靖之ユース監督コラム「情熱は足りているか」5

厳しい話だが、どこの育成組織でもプロになれるのはほんの一握り。なれない人間のほうがずっと多い。
例えプロになったとしても、選手生命は10年程度。その後の人生のほうがずっと長い。引退後はほとんどの選手が社会に出て、一般企業などで働くことになる。
だから、指導者として子どもたちに何よりも伝えたいのは、礼儀や謙虚さ、感謝する気持ちを持ち、人のために動ける人間になる、何かを目指して本気になる経験をする、ということだ。私が出会った選手は、これらを身に付けている人間が多かった。
例えば、中澤佑二(現横浜F・マリノス)は練習生時代、他の仲間がベンツやポルシェに乗る中、大きなおにぎりを持ち、電車と徒歩で地元から2時間かけてヴェルディの練習に来ていた。苦労をいとわない強さがあった。だから、日本代表や五輪メンバーになっても、鼻にかけるような態度は取らなかった。
サッカーとは不思議なもので、普段の生活態度とプレーは切り離せない。つまり雑な生活を送っていると、集中力を欠くプレーが多くなる。
練習準備ではスタッフと一緒に用具運びを手伝う、ごみが落ちてたら拾う、あいさつをする。7月にはアルウィンの観客席約5000席を皆で磨いた。世の中を大きなチームと考え、チームメートが気持ちよく過ごすために動く人間になってほしい。
そうした考えを身に付けてほしい。優等生じゃなくてもいい。はめを外して痛い目に合うこともあるだろう。また、恋愛をするのはとても大事。「彼女つくれよ、デートしろよ」と子どもたちに言っている。(U-18監督)