山雅「レジェンド」座談会(上) J1昇格新たな戦い

150106yamp松本駅前にあった喫茶店の客有志らが愛好会として立ち上げ、今年で50年になる松本山雅。これまで多くの人が関わり、力を尽くしてきた。かつては選手として活躍し、現在はスタッフとして支え続ける6人の「レジェンド」たちは、自らが所属したチームのJ1昇格をどう見、それぞれの立場で新たな戦いにどう臨むのか―本音で語り合ってもらった。2回に分けて紹介する。

【神田文之】(かんだ・ふみゆき) 山梨県生まれ。05年9月―06年2月在籍、MF。取締役管理本部長。2月1日から社長に。37歳。
【柿本倫明】(かきもと・みちあき) 福岡県生まれ。08―10年在籍、FW。クラブアンバサダー兼ユースアカデミーU―14監督。37歳。
【小澤修一】(おざわ・しゅういち) 神奈川県生まれ。05―10年在籍、MF。クラブ広報。35歳。
【矢畑智裕】(やはた・としひろ) 茨城県生まれ。05―08年在籍、DF。ユースアカデミーU―13監督。34歳。
【小林陽介】(こばやし・ようすけ) 東京都生まれ。09―10年在籍、FW。ユースアカデミースクールコーチ(普及担当)。31歳。
【片山真人】(かたやま・まさと) 大阪府生まれ。07年、11―12年在籍、FW。事業本部ホームタウン担当兼プラスワンバサダー。30歳。

―昇格を決めた39節・福岡戦(11月1日)、どこで歓喜の瞬間を。
片山 行きたくても行けなかった人がたくさんおるからね。
―この中で行っていた人は小澤さんだけ。
小澤 はい。僕はピッチサイドで走り回ってましたね。
―あれだけ盛り上がったのは予想外でしたか。
小澤 いえ、予想はしていて、その後の準備に追われていました。昇格が決まったらあれをやってくれ、これをやってくれという依頼がとても多くて。それを頭の中で繰り返し確認し、終了後のシミュレーションをして、試合の終盤は、もうそればかり。だから、あんまり実感がないんです。試合もほとんど見られなかったし。
片山 俺と陽介さんは歌ってましたね、Mウイング(松本市)のパブリックビューイング会場で。めっちゃ盛り上がってましたよ。
小林 昇格記念Tシャツも着させていただきました。
柿本 僕は(会社の)外で、知り合いと一緒に。
神田 僕も外でしたね。
小澤 (矢畑を指し)一番興味なさそうだよね。
片山 たぶん試合を見てない。
矢畑 見たって。途中からだけど。
一同 ほら、途中からって!(笑)
―仕事があったとか。
矢畑 いや、飯食いに行って帰ってきて、残り20分くらい。
片山 20分だけ(笑)。
小澤 J2に上がった時(11年12月4日、宮崎県で行ったJFLホンダロック戦に勝利)は、3人(小澤、柿本、矢畑)でクリニック(出張指導)に行っていたんです。そこで子どもたちが騒ぎだして、昇格を知ったという。
矢畑 ?
片山 覚えてないの?まあ、いろんなレジェンドがいますから(笑)。
―J1昇格が決まった時の率直な気持ちは。
柿本 今年の戦いぶりを見てきていたので、その瞬間の驚きはさほどありませんでした。ただ、こんなに早くJ1へ手が届いたのかという驚きはありました。
片山 確かに、まさかたった3年でJ2を駆け抜けるとは思わなかった。そこは僕もすごいと思いました。
神田 試合終了の瞬間は携帯電話が手元になかったんですが、少し後で見てみたら、応援してもらった方やお世話になっている方から、これまでにないくらい、たくさんの着信やメールなどがあったんです。そのことに驚き、昇格を実感しました。東京で働いていた時の職場の方からも連絡をもらい、全国的に知ってもらう新たな機会になったのかなと感じました。
―昇格を決めた福岡は柿本さんの出身地ですが、何か感慨は。
柿本 うーん、やっぱり現地に行ってませんからね。その場にいなかったというのは…。
片山 行きたかったですよ。(試合後の)集合写真に俺も入りたかった。
小澤 いや、俺も入ってないよ。この6人は誰も入ってない。
片山 まあ、僕らは影で支える存在ですからいいんです。書いといてください、これ。
―チームが快進撃を続ける中で、皆さんの仕事の現場で変化などは。
柿本 (保育園や幼稚園の)巡回指導に行くと…。
片山 え、俺が言うんですか(笑)。ええと、巡回指導に行くと、山雅のユニホームを着てる子どもがたくさんいたり、横断幕を掲げてくれたりする園もありました。昇格決定後は、園のみんなで声を合わせて「昇格おめでとう」って言ってくれたり。そういう変化は明らかに増えたと感じました。うれしいことです。
―15年シーズン、チームに期待することは。
小林 残留…でしょうかね。
片山 シーズン前から俺らが言っていいか分からんけど、やるからには優勝を目指しつつ、ただ現実的には残留が目標になるでしょう。
小澤 残留できたらたいしたもんだ、と。
片山 そう。やるからには優勝狙わなあかんけど、まずは、今やっとたどり着いたJ1の舞台から簡単に降りてはいけない。なんとしてでも食らいついて、残留―というより、定着とか、継続とか、うまく言えないけど、ここに居続けることが大事やと思う。
小林 そういうことだね。以下同文。
柿本 言うことなくなっちゃった。
小澤 おそらく、成績面では苦しいシーズンになるでしょう。だけど山雅って、苦しいときほど団結し、力を発揮してきたところがあると思う。来年はトップチームだけじゃなくて、クラブとして一致団結し、よりまとまれるきっかけになるんじゃないかな、という気もします。
―雨降って地固まる、と。
小澤 そう。だからこういう(矢畑を指す・一同笑)興味のない人も、J1の舞台で勝ったりすれば、人一倍はしゃぐかもしれない。そういう姿をたくさん見たいですよね。
片山 楽しみですよ、どこまでやれるか。
小澤 対戦相手は浦和や横浜FM、G大阪です。育成にもいい影響が出るだろうし、子どもたちの意識も変わるはず。
片山 J1の育成組織だからね。そりゃ違うよ、子どもたちにとっても。誇りだし、うれしいと思う。
神田 チームは反町監督に任せれば何とかしてくれる、という期待感はある。自分も含めてですが、こうして会社に加わってくれている元選手たちが、トップチームに負けないくらい活躍する姿を見たい、というのはありますね。
片山 俺ら、まだまだ足りんと(笑)。
小澤 もっと働けと(笑)。
神田 いやいやいや…でも、他のクラブに負けないくらい、中からそういう人材が出てくることは、クラブの成長にもつながると思います。ここにいるメンバーは大事です。
―J1に行くと、ユースアカデミー(育成組織)はどうなる。
矢畑 なかなかすぐには変わらないでしょうけれど、いい刺激が増えるのは間違いない。ただ、僕は仙台(2000―03年在籍)で味わっているんですが(仙台は01年J1昇格も03年降格)、やっぱりトップチームが降格してしまうとお客さんが離れたりして、地域の熱が下がってしまう。それは怖い。最低の目標である残留を果たしながら、山雅らしいサッカーをして、お客さんを楽しませてほしい。それはプロの使命でもあると思う。
片山 神田さんよりいいこと言ったね。
神田 (苦笑)
柿本 いや、カンちゃん(神田さん)が引き出したんだよ。
神田 俺のことはもういいよ(笑)。
(文中敬称略、聞き手は長岩将弘)