塩尻市の空き家対策が効果

塩尻市と市内不動産業者が昨年7月から連携して進める、県内でも先進的な空き家対策が効果を上げている。今年8月までに15件の空き家が新たな持ち主か借り主を得た。9月からは未着手だった市街化調整区域の対策も開始。市にはこれまで100件を超える売却や賃貸の希望が寄せられている。
8月4日、広丘原新田にある築44年の民家に、家主の家族、市内の不動産業者2社、産業廃棄物処理業者、市から空き家対策事業を業務委託されている市振興公社職員が集まり、30分ほど家屋内外を調査。物件価格や廃棄物処理費用などを査定した。
立ち会ったのは家主の兄、谷尻淳さん(74、宗賀)。すでに他界した両親が建てた家で、15年ほど前から空き家。谷尻さんや家主(都内在住)が時折風を通し、草刈りをする。庭木の剪定(せんてい)費、電気や水道代、固定資産税など、維持管理費を負担し続けてきた。市の取り組みを知り、活用を決断。「腕の良い大工さんが建てた家。だれかに住んでもらえたら」と期待を込めた。

市は、空き家の相談窓口を、振興公社に常駐する空き家コーディネーターに一本化。約600件の「空き家の可能性が高い物件」について家主を調べ、今後の意向を聞くアンケートを昨年5月から行っている。
用紙はこれまで約500件に発送し、回答率は53%。そのうち102件が空き家の売却か貸し出しを希望。コーディネーターが希望者と連絡を取り、物件を下見して、不動産業者につなげている。
不動産業者は、市内の20社でつくる「空き家利活用促進連絡会」から2社派遣。物件を査定し、市と県の空き家バンクへ登録するか解体。連携開始からこの1年で20件空き家バンクへ登録し、15件の活用が決まった。
市は9月1日、空き家の改修や解体費用の補助制度の対象と空き家バンク登録の対象を、市街化調整区域の物件にも拡大。今後、同区域での査定も本格化する。

空き家家主の情報は、市と振興公社だからこそ得られる。2者が掘り起こした貴重な情報を元に、家主と不動産業者を引き合わせることで、空き家解消につなげるのが塩尻市の取り組みだ。
公社に昨年春、空き家対策専従職員を置いたことが第1のポイント。コーディネーターの藤森茂樹さん(61)は「市の信用があるので市民も相談しやすいし、本音を話してくれる。2012年度に空き家バンクを始めたが、成約は4年間で4件のみ。1年で15件はうれしい」と手応えを口にする。
第2のポイントは昨年7月、市内の不動産業者20社が「空き家利活用促進連絡会」をつくり、市と連携して空き家対策に乗り出したこと。
木造戸建て住宅は、業界の慣習で、20年ほどで価値がゼロになる。不動産会社が手にする手数料は物件価格から算出されるため、空き家の仲介はうまみがない。
それでも市に協力するのは、空き家増への危機感だ。「空き家は治安悪化などの原因にもなり、放ってはおけない問題。少しでも減らさないと、近い将来そのツケは市民、国民へ回ってくる」と同連絡会の恩田弘志会長(64)。「1年目は試行錯誤だったが、2年目はもっと効率を上げられる。引き続き成果を出していきたい」と力を込めた。
市振興公社電話0263・51・0802
(松尾尚久)