塩尻市が高校生に起業家精神を育むプログラム

塩尻市は11月から、講演やワークショップ(WS)を通して高校生に起業家精神を育む取り組みを始めた。進学や就職のほかに「起業」という選択肢があることを意識付け、将来塩尻で起業する人材を増やしたい考え。市町村事業としては県内初の試みだ。
「高校生起業家育成プログラム」と銘打った新規事業で、市が連携協定を結ぶ国立長野工業高等専門学校(長野市)で始めた後、12月5日までに東京都市大塩尻、田川、塩尻志学館の各校で実施。来年1月下旬には市内在住の全高校生向けに、起業家の講演やWSをする起業カンファレンスも開く。
都市大塩尻の1年生約280人を対象に11月17日に行ったプログラムでは、スポーツのオンラインレッスンアプリを開発、運営する「だんきち」(大阪府)の与島大樹社長(33)が講演。高校まで野球に打ち込んだことや、会社員時代にさまざまな事業を立ち上げては失敗を繰り返したことなどを紹介。「社会の課題を見つけ、自分の手で変えたいと思うことが原点。新規事業立ち上げは基本的に失敗の連続で、一つずつ学んで前進していく。恐れずに挑戦して」と力を込めた。
特別選抜類型探求コースの18人が参加したWSでは、5班に分かれて事業計画書を作成。事業化する上での課題と解決方法、お金の流れや戦略などを2時間半にわたり考えた。
健常者と手話を使う人が不自由なく対話できる社会の実現を目指した男子生徒4人は「AI(人工知能)を使った手話翻訳アプリ」を考案。「利用料は月額制に」「ろう学校の協力を得よう」など計画を練った。
ピアノの「調律ロボット」を考えたのは女子生徒3人。「調律師に頼むと調律の間に家を空けられないが、ロボットだと出かけられる」などセールスポイントを絞り、「2階にも運べるよう軽量化を」と具体的に考えた。
調律ロボット班の松永菜佑さん(同市広丘吉田)は「最初は起業に興味はなかったが、世の中の困り事を考え、仲間と一緒に解決策を探ることは想像以上に楽しかった」、谷井麻愛さん(辰野町)は「『失敗は成功への近道』という与島さんの言葉が印象的。これからは興味を持ったことにどんどん挑戦したい」と目を輝かせた。
同プログラムは来年度から本格実施。「社会の課題を解決できる、創造力や社会性などを身に付けた人材を育てたい。将来塩尻に戻って起業し、雇用を生み出す人が現れればうれしい」と市担当者。
同様の取り組みは、県が15~17年度に毎年中高2校を対象に行ったことがあるが、「市町村の事業は塩尻だけ。今後県内に広まっていくことを期待している」(県産業労働部)という。
(松尾尚久)