スケート人口減少に歯止めを

中信地区のスピードスケート競技人口を増やそうと、関係者が地道な努力を続けている。スケートリンクが減り、選手育成の場所や機会も少なくなってきたのに危機感を抱いているからだ。平昌五輪で冬季スポーツに注目が集まる中、裾野を広げようとする取り組みが各地で続く。
ワールドカップ優勝の経験もある羽多野(旧姓・清水)美映さん(43、朝日村西洗馬)は、1月から子ども、一般向けのスケート教室を開いた。羽多野さんが指導するのは、同村針尾のスケート場。あさひスケートクラブでもコーチを務めるほか「競技だけでなく、裾野を広げたい。ちょっとしたこつを教えてあげて、子どもも大人も楽しく滑るお手伝いができるのではと、数年前からずっと考えていた」。年齢や経験を問わず教室を3回開き、延べ40人が参加。松本市や安曇野市から参加した保護者からは「基礎を少し教われば、子どもが滑れるようになるのではと、ずっと教室を探していた」との声も聞かれた。

スピードスケートの競技人口が減ったのは、地区唯一の本格リンクだった松本市浅間温泉国際スケートセンターが、2011年に廃止された影響が大きい、と関係者は指摘する。最盛期の1979(昭和54)年には6万7000人余が訪れたが、2002年には1万人を切るまでに低迷し、施設の老朽化などで11年に閉場。練習拠点を失い消滅したチームもある。
今冬の全国大会予選となる中学、高校の県大会に、中信地区から選手が出場したのはいずれも2校。これまで市町村単位で開いていた大会を合同開催にしても、独走や参加ゼロの種目もある。
リンク廃止は「スケートに興味を持つきっかけ作りも失った」とする声もある。シーズン終盤に開いていた中信地区大会と松本市民大会は、岡谷市のやまびこ国際スケートセンターに場所を移して開催。このうち、14年から塩尻市と朝日村の大会と合同開催となった市民大会は、シーズン初めの12月に開く。
松本市今井小の天然リンクで、スケート授業にボランティアで携わる50代の女性は「以前は授業や放課後の練習で滑れるようになった子が、気軽に市民大会に参加していた。それを機に競技に進む子もいたが、今は氷が張る前に大会があり、参加を呼び掛けられない」と嘆く。自身も子どももスケートに親しんできたことから「興味を持って楽しいと思う子が増えてくれれば」とボランティアでの指導を続けている。

中学、高校ではさらに練習拠点は少なく、部活やチームのある南信の高校へ進学する生徒もいる。やまびこ国際スケートセンターで、小学生から大学生を指導する新谷純夫さん(67、宮田村)の元には、中信地区から通う生徒もいる。
平昌五輪で活躍が期待される小平奈緒選手(相澤病院)を高校まで指導した新谷さん。「スケートの人口減少は中信地区だけに限らない」とした上で、「昔は他の競技と並行し、冬の体力作りにスケートをする子が多かった。最近は通年化で一つのスポーツしかやらない子が多い。心や体の成長には、多くの体験をした方が良いはず」と警鐘を鳴らす。
羽多野さんは「来年以降も教室は続けていきたい」と話している。寒さの厳しいこの地域だからこそできるスケート。競技人口を増やすには、地道な土台作りからもう一度取り組む必要がありそうだ。
(上條香代)