「女神」舞う聖地、白馬山麓の遅い春(白馬村)

170601sikip白馬村の花カタクリが終わり、タチツボスミレの群落で吸蜜するヒメギフチョウ。移ろう春の花暦を通り過ぎる時の流れがはっきり見える=ニコンD3S、AFVR-ニッコール80~400ミリ、SL、白馬村

命が躍動する5月中旬の白馬山麓を彩るタチツボスミレ。その群落でヒメギフチョウに出合った。
薄紫色の花のじゅうたんに見とれていると、目線の先に花に埋もれ何かが動く。ヒメギフチョウだ。伸ばしたストローの先をせわしなく動かし花から花へ。野辺を彩るタチツボスミレとヒメギフチョウの小さな命の共演が遅い白馬山麓の春を鮮やかに演出していた。
ヒメギフチョウは、アゲハチョウ科ギフチョウ属で羽を広げると5~6センチ。黄色と黒のだんだら模様の美しい姿で優雅に舞い、ギフチョウとともに「春の女神」と呼ばれる。白馬地方には両種の分布境界線(リュードルフィアライン)が通り、両方が生息。全国でも数少ない混生地で、学術上からも貴重な聖地である。
このチョウを語る時、忘れてはならない人がいる。「残された人生は、ギフチョウとヒメギフチョウのために」と妻の秀代さんと踏ん張ってきた神城の故小山章さんだ。スキー場開発が盛んなころ、自宅近くのカタクリが自生する17アールの山林を生息環境の保全にと買い取り、「喜蝶園」と呼んで開発から守ってきた。章さんの遺志を次代にと、秀代さんが建立した「喜蝶園」の碑が「カタクリ苑」を見守っている。
白馬村のギフチョウとヒメギフチョウは、1974(昭和49)年に村の天然記念物に指定されている。
(丸山祥司)