「九十五の爺」恩人の医師に門松を贈る

松本市神林の「あかはね内科・神経内科医院」の玄関先に昨年暮れ、人知れず手作りの門松が置かれていた。門松には手紙が添えられ、命を助けてもらったことへの感謝の思いと末尾には「九十五の爺」の文字。院長の唐木千穂さん(48)は、門松を作ったのが誰かすぐに分かった。「戌(いぬ)年」生まれの年男で、同院近くで農業を営む三村勲一さん(95)だ。
三村さんは1922(大正11)年生まれ。農家の長男として家を継ぎ庭師としても働いた。数年前までJAの松本結婚相談所所長を45年間務めた。
そんな夫を支え続けた妻の千代子さんは昨年6月、90歳で亡くなった。四十九日法要を終えた直後の7月末、今度は三村さんが熱中症にかかり病院へ。幸い一夜で退院した。
その後8月に入って間もなく、心臓と腎臓に異常をきたし、唐木さんの診断を経て、再び病院に搬送された。心臓のペースメーカーを取り付ける手術をして一命を取り留めた。
「2時間半の手術中に臨死体験をした。どうにか生きて帰れたのは先生のおかげ」と三村さん。「死んだ妻が身代わりになってくれた」とも。
門松は「出荷するほどの腕前」という三村さんは、感謝の思いを込めて門松を手作りし、贈ることにした。門松を見た患者さんが少しでも元気になればーと、庭のアカマツを使って高さ65センチほどのものを完成させ、医院の玄関先に置いた。
「生涯青春、生涯現役、生涯勉強」がモットーの三村さん。幼いころ祖父から「人のために生きよ」と言われたことも人生の指針になっており、結婚相談員としてまとめた60組の夫婦が全て円満というのが自慢だ。
短歌歴50年でもあり、「起きて見つ寝ては夢見るおっ母(かあ)よつのる想いに独り暮れゆく」などの歌を詠み、千代子さんの遺影に向かって話しかけるのが日課となっている。今後は健康に留意しながら「100歳を目指す」と意気込む。
主治医の唐木さんは「三村さんの地域を思う気持ちや何事にも意欲的に取り組まれる姿勢は学ぶことばかり。ますますお元気で」とエールを送っている。
(平林静子)